10月12日、台風19号が関東地方を直撃しました。この台風の影響でお亡くなりになられた方もおられ、お悔やみ申し上げます。また、強風・浸水被害に合われた方におかれましては、お見舞い申し上げます。今後の参考のために、今回の台風直撃に際して感じた事をまとめました。
今回、私共のステーションは幸いにも被害がなく、ご利用者様も無事にやり過ごすことが出来ました。私達が行った事は、台風接近にあたって、ステーション内での連絡体制や対応についての確認と、ご利用者様個々の対応方法の確認を行いました。
ハザードマップ上、浸水被害の予測される方で独居や自身での避難が難しいと考えられる方へは避難場所や緊急時の垂直避難の案内をしました。人工呼吸器管理の方、吸引が必要な方、在宅酸素を使用している方へは停電時の対応方法の確認をしました。予備バッテリーの有無と充電の依頼、バッテリーを使用してどの位の時間使用できるのかの確認、吸引器の充電の確認と充電が切れてしまった時の対応方法、酸素ボンベの残量の確認とボンベへの切り替え方法の確認などを行いました。
今回この地域では長時間の停電はなく、大きな問題は発生しませんでしたが、人工呼吸器のバッテリーはおおよそ9時間程度しか持ちません。中にはアンビューバックを使用しての待機も出来ない方もいます。各家庭での発電機や蓄電器の用意は思いの他少なく、「何か用意をした方がいいかと思ってはいたが、発電機も色々ありどれがいいのか。金額も安いものではないので迷っている内にこんな事態になってしまった」との言葉も聞かれました。実際に、ガソリン式の発電機は普段の管理を忘れがちであったり、台風前のガソリンスタンドはかなりの混雑になっていて使いたい時に十分なガソリンが確保できるのかわかりません。また、この発電機を使用して人工呼吸器の外部バッテリーがどの位充電できるのかもわかりません。蓄電器も同様で、使い切ってしまった後いつ・どこで充電できるのか確約できるものは一切ありません。近くの病院などに電源だけ借りに行く事も考えましたが、病院の自家発電も6時間程度しか持たないと今回初めて知りました。(病院はその後の対応も確保していますが、)入院中の方の治療や救急搬送された方の検査・治療が優先されるのは当たり前の事で、電気だけもらえればいいと言う考えはなかなか難しいと、自分達の考えを改めました。
医療が進み、地域には医療機器を使って生活している方が沢山います。その多くが電気を必要とします。それを考えると、長期間の停電の怖さを感じずにはいられません。
また、この地域には荒川水系の支流も多く、今回もう少しで氾濫という所まで水位が上昇していました。ご利用者様の中には川沿いに独居で住まわれている方もおり、ご近所の方のお手伝いを借りて一時避難された方もいます。指定避難場所の多くは小中学校の体育館等になっていますが、介護の必要な方は体育館での滞在が難しい方も多くいらっしゃいます。そのような方の為に福祉避難所というものがあります。ただ、この福祉避難所については、市町村によっても利用の仕方が違う様です。新座市周辺では、直接の利用は出来ず、一時避難所に行き数日後に振り分けられる事になるそうです。あらかじめ登録が必要な市もあるとのこと。事前に十分情報を把握して、必要な時に利用できるようにしておかないといけません。
また、今回は浸水の恐れがあり避難勧告が発令されて避難された方が大勢いらっしゃり、近くの避難所がすでにいっぱいになっていた為、台風の中、車椅子で遠くの避難所まで行かざるを得なかった方もいらっしゃったと聞きました。それでも、避難勧告は一部の地域にしか出ていません。地震などの家屋倒壊が起きた場合、更に多くの人が避難所に押しかけます。果たして、避難所の数が足りるのでしょうか?
訪問看護の現場は地域になります。施設とは違う問題が発生します。その為、被災された訪問看護ステーションの方の話を聞く機会を持ったり、災害対応マニュアルなどの作成をしたりしています。しかし、実際の災害に直面していない為か、話し合いも堂々巡りになっている様に感じます。福祉避難所の利用のしかたやどこにあるのかなどの情報も、地域の介護・医療が必要な方を扱っている訪問看護ステーションにさえ降りてきません。
自助・公助・共助という言葉がありますが、災害時に公助を期待する事は難しいでしょう。大勢を相手に一度に公助は動きません。まずは自助・共助の力をつけて、自分の身は自分の力で守るという意識を強めるべきなのだと感じました。どこまでの用意が必要なのか、地域でできる事は何なのか、私達ができる事は何なのかを改めて考えさせられました。そして、地域・行政と協力して行動して行く仕組みが必要だと感じました。